1.相続登記
相続登記について語ります
未来につなぐ相続登記 (法務省HPより抜粋)
近時、相続した不動産について相続登記がされていないケースが数多く存在していることが、東日本大震災からの復興に関連して報道されるなど、相続登記が社会的な関心を集めていることを御存知でしょうか?
相続登記が放置されているため、所有者の把握が困難となり、まちづくりのための公共事業が進まないなどのいわゆる所有者不明土地問題が顕在化しており、また、相続登記の未了は、適切な管理がされていない空き家が増加している大きな要因の一つであるとの指摘もされています。
すぐに相続登記をした場合のメリット
不動産についての権利関係が明確になり、相続した不動産を売却しようとしたときに、すぐに売却の手続をすることができますし、担保に入れて住宅ローンを組むことができます。
相続登記をしないで放っておくデメリット
当事者に所在不明の方などがいる場合、すぐに登記を含めた相続の手続をすることができず、相続分を確定することが困難となります。さらに、相続が2回以上重なると、誰が相続人となるのか、その調査だけで相当の時間が掛かり、相続登記の手続費用や手数料も高額となってしまいます。相続の手続に時間が掛かると、相続した不動産を売りたいと思ったときに、すぐに売ることができなくなるなど、思わぬ不利益を受けることがあります。
法務省は、相続登記の手続の見直しに取り組んでいます
平成28年3月、相続登記の申請をする際に提供する必要がある添付情報の見直しを行い、滅失等により除籍等の謄本を提供することができない場合には、その旨の市町村長の証明書を提供すれば、「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明書添付)の提供を要しないこととしました。
また、平成29年3月にも、添付情報の見直しを行い、所有権の登記名義人である被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なる場合において、被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が掲載されているものに限る。)又は所有権に関する被相続人名義の登記済証が提供されたときは、不在籍証明書及び不在住証明書など他の添付情報の提供を求めることなく被相続人の同一性を確認することができることとしました。さらに、同月において、相続登記の手続きの簡素化を図るため、第一次相続の相続人による遺産分割が未了のまま第二次相続及び第三次相続が発生し、その遺産分割協議が第一次相続及び第二次相続の各相続人の地位を承継した者並びに第三次相続人の相続人によって行われている場合において、遺産分割協議書に不動産を第三次相続の相続人の一人が単独で相続した旨の最終的な遺産分割協議の結果のみで掲載されているときであっても、「年月日B(第一次相続の相続人)相続、年月日C(第二次相続の相続人)相続、年月日相続」を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することができることとしました。
2019/2/28付 日本経済新聞より
法務省は8日、所有者不明の土地が増えている問題を解消するため、民法と不動産登記法を見直すと発表した。相続登記の義務化や所有権の放棄を認める制度の創設、遺産分割の話し合いができる期間の制限などが柱となる。山下貴司法相が14日の法制審議会(法相の諮問機関)総会で諮問する。2020年の臨時国会に改正案を提出したい考えだ。
法相は8日の閣議後の記者会見で「所有者不明土地は民間の土地取引など土地の利用を妨げている。対策は政府全体で取り組むべき重要な課題だ」と述べた。
所有者不明の土地は不動産登記簿などの所有者台帳で所有者がすぐ分からなかったり、判明しても連絡がつかなかったりする土地を指す。増田寛也元総務相ら民間有識者の研究会による16年の推計によると全国で約410万ヘクタール。40年には約720万ヘクタールにまで広がる見込みだ。所有者を探す費用や公共事業の遅れなどの経済損失額は同年までの累計で約6兆円に上る。
こうした土地は所有者が亡くなった後に相続人が決まらず放置されたり、相続人が登記簿上の名義を書き換えなかったりして発生する例が多い。権利関係を外部からわかりやすくするため、法務省は相続時の登記の義務化を検討する。登記していなければ罰金などを科すことも視野に入れる。
現在は相続登記は任意で、登記するかどうかは相続人の判断に委ねられる。名義が死亡者のまま長年放置されれば、法定相続人が分からなくなる可能性がある。土地の購入や賃借をしたい人がいても取引が進まない。
相続人同士が遺産分割を話し合いで決める期間にも制限を設ける。話し合いでの合意や家庭裁判所への調停申し立てがされずに被相続人が亡くなって一定期間が過ぎれば、法律に従って自動的に権利が決まるようにする。期間は3年、5年、10年の複数案がある。
土地の所有権を放棄できるようにする制度も検討する。例えば「遠方に住む親から土地を相続したが、手入れが難しく手放したい」などのケースでも、現在は放棄を認めていない。放棄を認める条件や、第三者機関や自治体など受け皿となる機関について議論する。税逃れや将来放棄するつもりで管理をしないなど、モラルハザードが発生しない仕組みも課題だ。
相続人のいない土地も活用を促す。被相続人が複数の土地を持っていた場合、債権者などが土地ごとに相続財産管理人を選任できるようにする。管理人は相続人がいないかどうかを調べた上で、土地をもらうべき人に分けたり、売却して債務の支払いに充てたりする。
相続人の調査にかかる期間を現行の10カ月から最短3~5カ月に短縮する。選任の費用負担も減らす。全ての土地を調べる現行制度では時間が長くかかり、費用もかさんでいた。管理人を介しやすくし、自治体や企業などへ売却を促す。
法務省の対策は新たな不明土地の発生を防ぐ仕組みが中心となる。すでにあるものも含めて不明土地を減らし、抜本的な解決に結びつけられるかは未知数だ。
<土地・建物の相続登記(名義変更)>
相続手続の中で、土地や建物の不動産については、相続登記(相続人への名義変更の登記)をする必要があります。
相続登記をしていなくても、固定資産税等の納税通知書は相続人のもとに届き、他にも名義を変える必要がなかったなどから、数年から数十年の間登記がなされていない場合もたまに見かけます。
相続登記事体は、いつまでにしなければならないということはないのですが、相続登記を放っておくと、相続人が亡くなって次の相続が発生し、権利関係が複雑になったり、戸籍等の収集に手間どるなど決していいことはありません。
数十年の間登記がなされていない場合には、相続人が30人や50人となることもあります。亡くなった方の名義の不動産を売却する場合に、売買契約の前提として相続登記をすませておく必要があるのですが、その段階になって慌ててしまうという場合も多くあります。
以上のことからも、相続登記はなるべく早く済ませておくことをおすすめします。
疑問などございましたら、いつでもお電話下さい。相続登記についても、ご相談は無料です。
●相続登記の必要書類
<相続人が1人しかいない場合>
- 被相続人(亡くなられた方)の、除籍謄抄本(出生時から死亡時までの全て)
- 被相続人(亡くなられた方)の、住民票の除票
→登記上の住所と、死亡時の住所が異なる場合は、つながりがとれる記載あるもの全て - 相続人の、現在の戸籍謄抄本
- 相続人の、現在の住民票
- 相続関係説明図(簡単な家系図のような図)
<相続人が複数で、法定相続分通りの持分で全員の共有名義にする場合>
上記の5つの書類が必要で、相続人の戸籍謄抄本と住民票は、各々の相続人について必要となります。世帯が同じ、戸籍が同じ方については、全員で1通あれば足ります。
<複数の相続人のうち、1人に名義を変更する場合>
- 上記の5つの書類
- 遺産分割協議書
→相続人の全員が「実印」を押印し、各々の「印鑑証明書」をつけます。
※なお、ご主人が亡くなり、自宅の名義を変更するという場合、奥様か、お子様の誰かか、いずれに名義にした方が良いかというご質問も多いです。相続税の基礎控除以上に財産があり、相続税が発生する場合には、税理士さんと相談する必要があります。
明らかに基礎控除以下で相続税が発生しない場合には、いずれでも特に問題はありません。ほとんどの場合は、奥様(お母様)名義にしていますが、もともと長男が同居していて、自宅の名義も亡父と長男の共有にしていた様な場合には、長男の名義にする事もあります。
<公正証書遺言か検認済みの自筆証書遺言がある場合>
- 公正証書遺言正本または検認済みの自筆証書遺言原本
- 被相続人(亡くなられた方)の、除籍謄抄本(※死亡時のものだけでよい)
- 被相続人(亡くなられた方)の、住民票の除票
→登記上の住所と、死亡時の住所が異なる場合は、つながりがとれる記載あるもの全て - 受遺者(相続人)の、現在の戸籍謄抄本
- 受遺者(相続人)の、住民票
※遺言書が無い場合と異なり、亡くなられた方の戸籍は最後のものだけでよく、出生まで遡って集める必要はありません。